認定NPO法人いわき放射能市民測定室 たらちね
組織結合型トリチウム測定のための前処理をしているところ
東日本大震災から12年〜たらちねから今、伝えたいこと
GRASSROOTS STORY (グラスルーツストーリー)は、ラッシュの助成プログラム「LUSH チャリティバンク」のパートナー団体が、今あなたに届けたい社会課題や草の根のアクションを紹介する声なき声の発信拠点です。
“たらちね”とは
認定NPO法人いわき放射能市民測定室たらちねは、2011年3月11日の東日本大震災による福島第一原発事故を受けて活動を開始しました。原発事故の被害は放射性物質の拡散による被曝被害です。放射能(放射性物質・放射能・放射線)は目に見えず、においもなく、感じることもありません。測定し、その値のみにより可視化できるものです。
人々を被曝から守るために測定は必要です。“たらちね”は、地域の母親が中心となり測定活動を継続しています。そのために実施している事業は、放射能測定・海洋環境調査・クリニックの運営・出張甲状腺検診・子どもたちの転地保養・心のケア事業・その他に地域の人々と一緒に学ぶ連携事業などです。
福島第一原発と子どもたちの様子
原発事故の収束には300年かかるといわれており、時間の経過とともに問題は次々と発生し、落ち着くことがありません。事故から12年目の今は、爆発しメルトダウンした核燃料に触れた高濃度の処理汚染水を海水で薄めて海に放出することや、福島県双葉郡への子どもを含む住民の帰還問題、福島イノベーションコースト構想による原発収束のための人材育成強化と、そのために小学生のうちから作業従事する方向で教育される子どもたちの問題、被災が続く中で成長する子どもの心の問題など、世代を超えて抱え続ける苦しみが横たわっています。
子どもたちの未来について考えること
2011年当時、未成年だった子どもたちは、大人になり親になっている人もいます。福島県いわき市にあるたらちねクリニックには、震災時の子どもたちが親になり、自分の子どもを連れて親子で甲状腺検診を受ける姿もあります。また、原発作業員となり、ホールボディカウンター(※)の測定を受けにくる人もいます。子どもたちが成長し、事故を起こした原発の収束作業に従事する姿を見るにつけ、この負の遺産を子どもたちが引き継ぎ、その肩に重くのしかかっていることを強く感じます。私たちの時代に起きた原発事故を300年後の子どもたちの時代まで引きずり続け、事故後に生まれた子どもたちが、被曝を伴う危険な作業を行う現実があります。私たち大人は、誰一人、その辛い現実から逃げることはできません。
今も高濃度に汚染されている双葉郡では、帰宅困難区域の解除が進み、平常時の1ミリシーベルト/年ではなく、緊急時の20ミリシーベルト/年の基準値でも良しとしたダブルスタンダードの環境に子どもたちの学校が造られ、そこで学び暮らす構造となりつつあります。放射能(放射性物質・放射能・放射線)は見えない、におわない、感じないものです。可視化できなければ、すぐそこにある危険を察知することもできません。しかし、危機はすぐそこにあります。双葉郡は、事故炉の収束作業のために人が必要で、そのために子どもたちを呼び寄せ、町を再興し、子どもたちの人材育成をしながら「事故を起こした原発を収束するための町」として、生き続ける選択をしています。
見えなければ何をしてもいいのか?子どもたちに健康被害が起きた時、どうするのか?責任の所在がはっきりしないことだらけの中、様々なことが動き、そして問題となっています。
※ホールボディカウンター:
体内に取り込まれた放射性物質の量を体外から測定する装置のこと
私たちにできること
たらちねがあるいわき市は、福島第一原発から約80km圏内です。車で1時間半程度の近い距離ですが、この事故が起きるまで、私含め、いわき市民の多くが原発の危険性について無関心でした。だから、突然の出来事に、被曝防護の知識もなく、知らないために余計な被曝をしてしまい、子どもたちを危険に晒してしまいました。
日本は、原発に囲まれた島国です。南海トラフ大地震や日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震など、数年後に高い確率で起きるといわれている自然災害は、原発事故を伴う複合災害に発展することも予想できます。
福島第一原発事故の経験を無駄にしないためには、原発事故が起きたらどう行動するべきなのか、どうやって被曝防護をしたらいいのか、など日頃から考えておくことが重要です。それは一人一人が自分の判断でできる防災でもあります。その心構えを持つことは、これからの時代の中で、とても大切なことだと思います。また、一度、原発事故が起きると、その収束には長い時間がかかります。そして、事故炉の後始末は被曝を伴う作業であり、環境も汚染します。人間にとってエネルギーは重要であり、電気は必要です。しかし、健康面、精神面、経済面で大きなリスクがある原発を、このまま選択し続けるのか?それを考えるのは未来の人々であり、その人々は、どんな選択をするのでしょうか。
私たちの世代で起きてしまった原発事故を学びとし、その選択に役立たせるために、この事故の検証は大変重要なものだと考えています。
“たらちね”では、2011年3月に起きた福島第一原発事故の影響を検証し、未来の子どもたちに伝えるために日々努力しています。また、その事故に遭遇し、被曝してしまった子どもたちが、健康に成長できるよう、心身の健康面を支える活動も行っています。そして、日本中、世界中の人々が“たらちね”の活動を支え、子どもたちのために、ともに歩んでいます。
原発事故の問題は、あまりにも大きすぎて、私たちにできることは限られていますが、やれることをやれるところまでやる、という気持ちで、これからも努力していきたいと思います。
認定NPO法人いわき放射能市民測定室 たらちね
理事長 鈴木薫
https://tarachineiwaki.org/
認定NPO法人いわき放射能市民測定室 たらちねは、助成プログラム「LUSH チャリティバンク」のパートナー団体です。本プログラムは、ハンド&ボディローション『チャリティポット』を中心としたチャリティ商品を対象に、売上げの全額(消費税を除く)を社会課題の根本解決に取り組む小さな草の根団体に寄付・助成しています。
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