認定NPO法人 ふくしま30年プロジェクト
福島県内でホットスポットファインダーを使って空間放射線量を測定する、佐原理事長と親御さんたち
GRASSROOTS STORY (グラスルーツストーリー)は、ラッシュの助成プログラム「LUSH チャリティバンク」のパートナー団体が、今あなたに届けたい社会課題や草の根のアクションを紹介する声なき声の発信拠点です。
放射線被ばくを低減するために
学びの場の提供と情報発信
私たちは、11年前の東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の事故後より、放射能測定を中心に活動を開始しました。行政に代わるセカンドオピニオンを提供する市民団体として30年の長きに渡って放射能を監視し、福島での暮らしを回復するために、学びの場を提供と情報発信を行っています。
子どもたちとともに:
福島で暮らす子どもたちに、放射線防護の知識をつけ、自分の身体を自分で守れるようになって欲しいという想いから、「こども放射線ワークショップ」を開催してまいりました。原発事故が何なのかさえわからない子どもたちに向け、今日に至るまで継続して行っています。原発事故後、子どもたちの屋外活動が制限され、遠隔地での「保養」の需要が高まりました。その後、全体的に空間線量は低下してまいりましたが、土壌の放射性物質は降雨などの影響で集約してホットスポットとなっている場所もあります。そのため現在も、山遊びや土いじりへの不安を拭えない家庭があり、汚染の少ない土地で、田植え、稲刈りなどの自然体験事業を行っています。
親御さんとともに:
親御さんと一緒に、子どもの通学路や遊び場、園児のお散歩コースなどの空間線量を測定する活動も行っています。行動範囲内の気になるところを測って確認しながら、「自ら判断することが大切」との想いを共有してきました。どこは安全で、どういったところに注意が必要かを母親たちが自分の目で確認し、子どもたちに伝え続けています。また、被曝のリスク対策の一つとして、身体の免疫力を高めることが重要です。免疫力向上には味噌、甘酒などの発酵食品が有効だというアドバイスから、実習型の発酵ワークショップを開催しています。
農業者とともに:
農業者や消費者の不安な気持ちに寄り添うため、農作物の食品放射能測定や、農地の空間線量測定、土壌の放射能測定などを継続して行っています。また、農作業中の被曝リスクを確認するためにも、ホールボディカウンターによる身体の放射能測定も2011年から継続しています。
『見えないもの』とたたかい続けた11年
今でもまだまだわからないことが多く、専門家の間でも見解が分かれているこの問題。事故当時、普通の母である私たちには、何が正しい判断なのかを知る術はありませんでした。当たり前にできていたことが、当たり前ではなくなった福島。この10年間の間、その時期なりにたくさんの人が悩み苦しみました。
避難したくても事情によってそれがかなわない人。
住み慣れた大切な故郷から避難することを選択した人。
価値観の違いから家族、友人と分断してしまった人。
何が正しい情報なのか分からず、様々なことを選択しなければいけない日々。月日が経つごとに疲れ切り、楽になれるわけではないとしても、もうその話題に蓋をしてしまう。当たり前にできていたことを止められ、または自粛し、思うように動けない我慢だらけの2020年からの今。心と身体の健康と、経済をまわすことを天秤にかけられているような様々な矛盾や、立場によっても違うことでの葛藤。どの選択が正しいのかわからず、考えや価値観の違いに口をつぐむ瞬間もあったはず。正解がわからない以上『念のため』の行動をとるべき。コロナ禍を経験した今の私たちは、震災後の福島の状況と被って感じるところもあったように思います。
その時期なりの市民の放射能への不安に対し、判断材料の提供をしていこうという想いで、活動を続けてまいりました。セシウム134の半減期はたった2年でも、セシウム137の半減期は30年かかるということから、30年は子どもたちの未来を見守っていきたい。そんな想いからの『ふくしま30年プロジェクト』の活動は、まだまだ続いていきます。
それぞれが正確な情報や知識を得て、自分で決める。判断する。
そしてそれぞれの選択ができるよう、未来に繋がる学びの場の提供と、発信を大切に考えています。福島が、そしてこの国が健全な暮らしを回復するまで見守っていくつもりです。
あと20年先も、未来を担う子どもたちがすこやかに成長できる福島であってほしい。
そして、不安なことを不安だと言える、価値観の違いを尊重し認め合える社会であってほしいと願っています。
2022年3月11日
認定NPO法人ふくしま30年プロジェクト 理事長 佐原真紀 https://fukushima-30year-project.org/
認定NPO法人 ふくしま30年プロジェクトは、助成プログラム「LUSH チャリティバンク」のパートナー団体です。本プログラムは、ハンド&ボディローション『チャリティポット』を中心としたチャリティ商品を対象に、売上げの全額(消費税を除く)を社会課題の根本解決に取り組む小さな草の根団体に寄付・助成しています。
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