LUSH PEOPLE

「昨日より今日が、素敵な一日なりますように」ロールプレイング大会 2023

「ラッシュにとって、ショップとは何か」と聞かれれば、「ブランドにとって、最大のメディア」と答える人は社内に多くいるでしょう。では、その「最大のメディア」を通して、コスメブランドであるラッシュは何を届けているのでしょうか。

「思うようにいかない日々にも、LUSH」。新型コロナウイルス感染症が落ち着いてきた2022年の冬、全国のラッシュのショップにはこんなメッセージが掲げられました。この数年は感染症の拡大に加え、度重なる自然災害や軍事侵攻など目を背けたくなるようなことが起きています。そんな中で「自分の仕事は誰の役に立っているのか」と考えた人は少なくないのかもしれません。

化粧品の製造、販売を続けるラッシュで働く私たちも、コロナ禍で「ラッシュはこの世界に何を届けているのか」「思うようにいかない日々に、ラッシュはどんな存在でいられるのか」と考えながら、たくさんの変化を経験しました。ショップの運営においては、これまでとは違うシフトや店舗運営を経験し、接客においてはラッシュの特徴でもあるお客様の肌の上で商品を試すデモの数が少なくなりました。

変化を余儀なくされたのは、店舗運営だけではありません。2020年の秋ごろから店舗運営をサポートする各国のリテールサポートチームは、「ラッシュのショップは、これからどのような役割を担っていくのか」「ショップで働くスタッフはこの先どのような存在でありたいのか」という議論が続いていました。話し合いが一年以上続いたある日、今の時代に合わせたラッシュのショップスタッフの役割が明文化されました。

WE ARE…

  • DAYMAKERS – お客様や一緒に働くチームンバーなど、誰かの一日を少しでも良いものにしたいと願う「 デイメーカー」
  • STORYTELLERS – お客様やコミュニティに伝えたいラッシュが大切にしていることをショップで知ってもらうきっかけとしての「ストーリーテラー」
  • EXPERTS – ラッシュというブランドやお客様が手にする商品、目の前のお客様や化粧品業界についての「エキスパート」

全国に70以上あるショップの運営サポートを通じて、ブランドの継続的な成長に責任を持つラッシュジャパンのリテールサポートチームのYOKOさんはラッシュのスタッフとしてフロアに立つには、3つのどれが欠けてもダメだと言います。

「お客様の『デイメーカー』になるには、『エキスパート』としての知識も必要ですし、お客様が手にしてくださる商品やラッシュがどういうブランドなのかを適切に知っていただくためには、『ストーリーテラー』であることも大切です。3つとも大切ですが、最終的に何が良いサービスなのかを決めるのはお客様です。一番大切なのは目の前にいらっしゃるお客様がどう感じるか。そのためにできることを準備したいと思っています。コロナ後の実店舗に求めることは『体験』というアンケートを目にしたことがあります。ラッシュにとってお客様の『体験』とは、商品をお試しいただくだけでなく、ショップにいるスタッフやディスプレイなど全てが含まれていて、『体験』を良いものにするために、スタッフの力は計り知れないと思うんです」

リテールサポートチームのYOKOさん(左)とREIKOさん(右)

お客様に選ばれるブランドであるために欠かせない「人の成長」

2020年、ラッシュは「サービス・オブ・ザ・イヤー」を受賞しました。その時のインタビューで「⾃分の仕事は⼈を成⻑させること、そして⼈に成⻑させてもらうこと」と耳にしたことは今でも記憶に残っていますが、ラッシュで働いていると「人の成長」という言葉をよく耳にします。それは、ビジネスの成長に人の成長が欠かせないということ。そのためにリテールサポートチームでは、チームの垣根を越えた「ラーニングカルチャー(学び続ける文化)」を社内に根付かせながら、リテールビジネスにおける人の成長にコミットし、様々なトレーニングや学びの機会を創出しています。

消費者のニーズや価値観が多様化したと言われて久しい2022年初め、いつか終息するであろうコロナ後の店舗運営について考えていたリテールサポートチーム内で、社内初となるロールプレイング大会を実施したいという話が浮上しました。ロールプレイング大会は通常、「誰が一番良い接客をするか」を競うイベントですが、この提案の背景にあった想いは、それぞれの「接客に順位づけをすること」よりも、それぞれがお客様とショップスタッフ双方を体験することで、今の自分たちができていることを再度認識しながら、伸び代を見出す機会を作りたいということでした。

ラッシュの行動指針「Lush Principle」の一つに「Lead by doing – 実践を通して学ぶ」という言葉があります。リテールサポートチームのアイデアにより、ショップの経営者であるショップマネージャーがこの機会を経験することで、今自分たちができることに自信を持ちながら更なるチームの成長を期待し、全ショップのマネージャーが参加者となった第1回ロールプレイング大会が開催されました。

カスタマーエクスペリエンスの質を向上し続ける使命

第1回ロールプレイング大会から1年が経った2023年の春、2回目となる社内のロールプレイング大会の予選が全国各地で繰り広げられていました。YOKOさんは、昨年初めてロールプレイング大会を実施してから、日本国内で新たなお客様に出会うことができたことは、自信になったと話します。

「昨年の冬には『思うようにいかない日々にも、LUSH』というメッセージをショップで掲げました。これにより、お客様にとって私たちがどんな存在でありたいかについて目線合わせをすることが出来ました。そして、数年連続でギフトカテゴリーの昨年比を更新することもできました。コロナ前の売り上げに戻りつつあり、コロナも少しずつ落ち着き始め、お客様がお店に戻っていらっしゃるようになったこの時期に、改めて実店舗がある意味をチームで話し合い、ラッシュにとっての最大の強みであるカスタマーエクスペリエンスのさらなる向上が大切なことが明らかになりました。ショップスタッフの役割が新たに明文化された今、昨年はショップマネージャーのみの参加だったロールプレイング大会に全ショップの全スタッフが参加する機会を作り、個々のスキルを高めてラッシュの成長につなげるためのトレーニングの機会を作りたいと思ったので」

チームの中では「こんなに頻繁に全社レベルのロールプレイング大会をやる意味はあるのか」という意見も出たそうですが、リテールサポートチームは今年ならではの実施方法として、審査員は設けず、本戦に進む6名のファイナリストの中から優勝者を決める投票は、本選当日のライブ配信を見る社内のスタッフに決めてもらうことにしました。

こうして予選が始まったのは、本戦が開催された5月下旬から2ヶ月も前のこと。各地域での予選大会から選ばれたファイナリストは、LUSH 水戸内原店、LUSH ピオニウォーク東松山店、LUSH 新宿店、LUSH ホワイティ梅田店、LUSH 神戸三宮店、LUSH 天神地下街店から選出された6名の勇士たちでした。

2年連続ファイナリストに選ばれたLUSH イオンモール水戸内原店のスタッフ

「接客は自由でいい」台本のない物語に触れた時に動く人の心

今年のロールプレイング大会本戦の日、会場のLUSH 新宿店にはライブ配信用のカメラが入り、テレビ局のスタジオさながらの雰囲気に包まれます。朝早くから今年のファイナリスト6名に加えて、コメンテーターとして昨年のファイナリスト5名も集結しました。

時計が9時を回るとライブ配信が始まり、全国のショップやオフィスメンバーも含めて100名以上の視聴者が集まり始めます。司会の挨拶の後、今年の優勝者を決める投票方法について説明がありました。

「今年は、視聴者の皆さんの投票によって優勝者が決まります!皆さんに改めてお伝えしたいことは、投票のポイントは接客の手順などではなく、皆さん自身がお客様として心地よいと感じるか、ということを覚えておいてください。もう一度この人に接客してほしい、この人から買いたい、またこのお店に来たいと思う接客かどうか。そして、『デイメーカー』『ストーリーテラー』『エキスパート』の各要素がカスタマーエクスペリエンスにどのように活かされていたかを見て、投票してくださいね!」

ライブ配信に届くコメントを見る今年のファイナリスト
今年はコメンテーターとして参加した昨年のファイナリスト

昨年同様、ライブ配信のコメント欄は興奮と応援の声が飛び交う中で、早速ファイナリスト6名のロールプレイングが始まりました。これまでの予選大会とは違い、中継用のカメラに追われ、全国のショップスタッフがその中継を見ていることは想像以上に緊張を誘うようです。自身のロールプレイング終了後には「緊張しすぎて記憶がない」と笑うファイナリストもいましたが、持ち時間10分の中でお客様役のスタッフに対してそれぞれの強みやスタイルを発揮しながら、6名のロールプレイングは終了。それから休憩を挟み、笑いの絶えない賑やかな雰囲気の中、昨年のファイナリスト5名も交えたトークセッションが行われ、昨年のファイナリストから今年のファイナリストへフィードバックが贈られました。

商品のデモの魅力的なこと!まるで商品が「こう使って欲しい」「こう紹介してほしい」と言っているそのままを紹介しているようでした。肌馴染みが良いクレンジング『ティートータラー』を「熱々のパンケーキの上で、バターが溶けるようなクレンジング」と表現する接客は、お客様をほっとさせるホットココアのような接客でした。

トークセッションの中には、思わず書き留めたくなるような言葉が登場しました。

お客様がぽろっと発信してくれた小さな言葉も、全て拾うことに気をつけています。スキンケア商品を見に来てくれる方って、「こういうことに悩んでて…」とネガティブになる方も多いのですが、ラッシュのショップを出る頃には「楽しんで使ってみます」と、笑顔で帰ってもらえるように心がけてます。

他のファイナリストのコンサルテーションを見て、いろんなコンサルのタイプがあるんだなって改めて思いました。エネルギー溢れる方もいれば、お客様に寄り添う方もいる。楽しいキャラクターの人もいる。チームのみんなには、変に「接客ってこうするんだよ」と決めつけないで、「もっと自由にやっていいんだよ」と発信したいです。

「接客は、もっと自由でいい」。この言葉を書き留めたくなったのは、この記事を書いている筆者だけではないはず。ラッシュの接客にマニュアルはありませんが、接客における評価項目は存在しています。それでもこの仕事の醍醐味は、目の前のお客様にどれだけ喜んでいただけるか。それを自分で考え、決めて良い。ロールプレイング大会中にこのような文脈で、ラッシュのスタッフに期待される「オーナーシップ」という言葉に触れるとは思っていなかったからか、これには思わずグッきました。

当日、運営スタッフとして忙しく店内を動きまわっていたリテールサポートチームのREIKOさんに声をかけてみると、「ロープレ大会は涙が出る」と言います。

「当たり前ですが、接客の仕事って最初からお客様とスムーズに話ができる人ばかりじゃなくて、お客様に話しかけるひとこと目がうまくいかなくて、試行錯誤していくんです。その中でちょっとづつタイミングやお客様に合わせた言葉のチョイスができるようになっていく。それでもお客様は千差万別。今回のファイナリストの中にはベテランスタッフもいて、そういう人が数ヶ月間、毎朝スタッフとロープレの練習をするんです。予選会場でも直前まで緊張の面持ちでいるみんなも、始まった瞬間にスイッチが入ってプロの顔つきに変わるんです。『なんて素敵なの!』って、涙が出てきますよ」

結果発表🏆

トークセッションが終わり、視聴者の皆さんによる投票が行われたら、いよいよ結果発表の時間です。

3位 LUSH 新宿店のスタッフ

コメンテーターからのコメント🎙️
「全ての商品をショップフロアで試すことができる、というラッシュの強みを体現しながらダイナミックなデモンストレーション、商品の紹介とともに惜しみなくラッシュのバリューをお客様に伝える姿、一緒に体験を楽しむ姿が印象的でした。日本を代表するショップのジェネラルマネージャーがガチンコで戦ってきて、今日ここにいることはすごく誇らしいと思いました。社歴も長い中で、この成長意欲はすごいと感じました」

2位 LUSH ホワイティ梅田店のスタッフ

コメンテーターからのコメント🎙️
「笑顔が印象的でボディランゲージ含めて、気持ちに素直にお客様に接する。このスタッフが笑うとお客様も自然と笑う。このスタッフの世界に引き込まれます」

そして、栄えある1位を獲得したのは、LUSH ピオニウォーク東松山店のスタッフです!

コメンテーターからのコメント🎙️
「今朝も緊張してしんどそうでしたけど(笑)、チームが一緒に頑張って、ここまで来れたと思います。接客が始まってすぐ、リップスクラブのデモをしていたことが印象的でした。コメントもたくさん来ていましたが、やっぱり会話が自然でした。ラッシュの共同創立者のロウィーナの言葉にもありますけど、まるでこのスタッフのお家に招待されたような雰囲気で、お茶を飲みながらお客様と自然に会話を楽しんでいる、そんな光景が想像できるくらいお客様もリラックスしていました。時にはちょっとゆっくりしてみたり、そんな時間を過ごしていたのが1位になった決め手なのかなと思いました」

「チョコレートを口に入れた時に溶けていく、あの感じを肌も味わえないかと思った開発者がいて」とマッサージバーの開発背景を紹介しながら、「チョコレートは舌に乗せて溶かす派か噛む派か」と、見ていても楽しい、驚くような会話の展開がありました

接客スキルを向上させるために練習はできますが、お客様との会話に台本はありません。ラッシュのショップで働くスタッフの仕事がセレンディピティのような物語を紡ぐことだとしたら、それは何にも変え難い価値ある仕事だなぁ、と感じたのは筆者だけではないはず。

「AI化が進み、ほとんど喋らないで買い物が終わることって増えてませんか?これから、そういう時代に進んでいくかもしれないですが、人の力や人の思いやりによって伝わるものがある。そんなことに改めて気づかされた時間でした」とロールプレイング大会を見ていたラッシュジャパン執行役員のYAYOIさんが話していましたが、「ラッシュにとって最大のメディアであるショップで届けたいのは、これだ!」という一つの答えに出会えた気がしました。

そんな今年のロールプレイング大会は、司会のこんな言葉で締めくくられました。

「皆さんにとっても昨日より今日が、素敵な一日になりますように」

編集後記

現場でこの大会を見ていた私は、胸いっぱいで会場を後にしました。その日の午後は心地よい疲労感で、ぐったり。人って感動すると、疲れるんですね。

それから「胸いっぱい」を言語化したくて、翌日から同僚たちにロールプレイング大会の感想を聞き回ると、それぞれの少しずつ違う視点での感想に、再び胸がいっぱいになりました。

ライブ配信をチームメンバーと見ていたというショップマネージャーは、1位に選ばれたスタッフが授賞式で開口一番、自分の店舗のショップマネージャーの名前を口にしながら、チームメンバーに感謝の気持ちを伝えるシーンにグッときたと話してくれました。「こういう人がチームにいるって、幸せですよね。子育てをしながら輝く、みんなのロールモデルのような存在で、『ラッシュの接客ってこれだ!』って思わせてくれたのは、お客様の温度感に合わせたちょうど良い、情報過多じゃない接客。商品やブランドの紹介と一見関係ないように聞こえる『チョコレート、噛む派ですか?』みたいな会話ができるって、心がフワってしませんか?お店で買い物をしてもらうことの価値って、お喋りができることじゃないですか。相手が話したくなるお喋りには、価値があるんです」

オフィスメンバーの中には「接客時のみんなの所作の美しさに見惚れた」と言う人もいれば、大会の翌日に優勝した店舗のショップマネージャーと地元の小学校の運動会で会い、ロープレのことを思い出して、また感動してしまったというクリエイティブチームのメンバーもいました。

会場にいた昨年のファイナリストにも後日ハイライトを聞いてみたところ、前述の「接客は自由だ」という言葉だと言うので、「私もあれには感動しました」と返すとこんな返答がありました。「あのスタッフの方がそれを実感する場があって、それを発信する場があって、それに感銘を受けたり考える人がこんなに沢山いて、そんな会話がまた別の場で繰り広げられるのっていいですよね」。かくいう私がまさにあの言葉に感銘を受けて、今でもそのことについて考えている張本人で、このメタ認知的な言葉にも驚かされました。インスピレーションは与えるものではなく、勝手に受け取り、自由に広がっていくものなのかもしれません。

もしかすると学びというものも、与えられるものではなく、何かが行き交う中でそれぞれが自由に受け取りながら、自然と培われていくものなのかもしれません。

2023年6月

Audio player image

12:11