Our story

シアバター

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シアバターからコミュニティの再⽣を

2017年11⽉、ラッシュのサプライヤーで、ガーナでシアバターをオジョバ ⼥性協同組合(Ojoba Women’s Shea Butter Cooperative)の経営⺟体であ るOjoba Collectiveの創⽴者、ヨハンとトレーシーが来⽇しました。  

⻑年、北⽶で環境保護や野⽣動物保護の活動、社会的正義のための運動に携わってきたヨハンとトレーシーが出会って20年。⼆⼈はその間、ガーナでビジネスを⽴ち上げ、シアバターの⽣産を続けながら、様々なリジェネラティブなプロジェクトに関わり続けています。

今回は、そんな⼆⼈にガーナでオジョバ⼥性協同組合を設⽴した背景や、シアバターの⽣産以外に取り組んでいるプロジェクトについて、ゆっくり話を聞くことができました。 

時を遡って、2002年のこと。⼆⼈は、ガーナを訪問することになりました。 

ヨハン 「ガーナに⾏ったのは⽬的は、実はビジネスではありません。⾳楽を学ぶためでした。ソウル、レゲエ、ロックなど全て⾳楽のルーツはアフリカにあります。そのルーツを学ぶために休暇でアフリカに⾏くことにしたのです」 

そこで⾒たのは、かつて⾒たことがないほどの貧困でした。 

ヨハン 「ガーナの貧しい農村で、⼈々はひどく飢えていました。メディアによく出てくるお腹がパンパンに膨れた⼦どもたち。服を⾝につけていた⼈も稀。その村でシアバターが作られていたのです」 

当時の2⼈のビジネス経験はほぼゼロ。それでも、その場所で出会った⼈々と⼼がつながったと⾔います。 

トレーシー 「現地の⼈たちは欧⽶にシアバターの需要があることを知っていたので、私たちに販売できるマーケットを⾒つけてもらえないかと相談をしてきました。私たちはビジネスの経験がなかったので、何も約束できませんでした。ただ、どうせやるなら責任あるエシカルな⽅法で、公正な取引をしたい思ったので、⽣産者である⼥性たちに会って、彼⼥たちから話を聞くことにしました」 

ヨハン「⽊の下に集まって話をしていたら急に村に電気が通ったんです。3ヶ⽉も電気が通ってなかったのに。電気がついた途端、みんな踊り始めました。そうしたら彼⼥たち、『これがサインだ』なんて⾔うんです。プレッシャーはありましたが、もう前に進むしかありませんでした」

これがOjoba Collective設⽴の瞬間でした。 

設⽴当初はシアバターの⽣産に携わる⼥性は50⼈いました。若い⼈は少なく、60歳以上がほとんどでした。当時、⼥性たちの暮らしについても話を聞いていると、ポジティブな話よりも、気の毒に思うようなことがたくさんあったと⾔います。 

トレーシー 「Ojoba Collectiveがあるのは、ブルキナファソとの国境に近い乾燥地域。農家として⽣活を営むこのコミュニティが⾬の恩恵を受けるのは⼀年のうちたった数ヶ⽉です。⼀年間に必要な⾷べ物はその期間中に栽培し、乾季に少しずつ⾷べていくために保存しますが、⾷べ物が⼗分に全員に⾏き渡ることはありません。そのため⼤⼈たちは、乾季になると劣悪な環境の強制労働も含め、出稼ぎに⾏きます」 

設⽴から15年がたった今では、⼥性たちは笑顔に溢れますが、⼥性たちはこれまで多くの苦しみを経験してきました。 

トレーシー 「病気が蔓延して、⼥性器切除や⽪膚切除、家庭内暴⼒も起こっていました。今は状況が⼤きく変わりましたは、⼥性たちの中には過去を忘れたいという⼈もいます」 

ヨハン 「彼⼥たちの苦労の理由の⼀つが⼀夫多妻制の社会であるということでした。⼀⼈の男性に⼆⼈以上の妻がいますから、⼀家族にたくさんの⼦どもがいました。これは家⽗⻑制社会の話につながるのですが、彼⼥たちの本業は農家で、男性たちも働きますが⼦どもの⾯倒を⾒たり、農業においては、⼥性ほど働きません」 

トレーシー 「⼥性たちに昔のことを聞くことはありません。聞いても『その時のことは話さない』と⾔われますね」 

シアバターを作る⼥性たちは、農業従事者であるため、シアバターの⽣産に関わるのは週に数⽇、1⽇に数時間です。 

ヨハン 「受注ベースで⽣産を⾏い、現在年間約100トンのオーガニックでフェアトレードなシアバターを⽣産しています。⽣産量を2倍、3倍に増やすこともできると思いますが、それをしないのは我々が誰にでも販売をしないからです。購⼊したいというオファーに対して、断ることの⽅が多いのではないでしょうか。価格交渉する企業もありますが、やり⽅や考え⽅が合わない相⼿にシアバターは売りません。⼥性たちが現地でビジネスを運営しています。価格はフェア、公正でなければいけない。そうでなければ、⼥性たちのエンパワメントにつながりません。⼥性たちのことを考えず、シアバターだけ欲しい相⼿には、Noと⾔います。絶対、話を受けません。我々はビジネスを⼤きくするためだけにそのようなことはしたくないのです」

トレーシー 「彼⼥たちが毎⽇⼯場で少ない収⼊を得ていては、素敵な⼈⽣を送れないでしょう。彼⼥たちにとってこれは単なる収⼊源ではありません。彼⼥たちは⾃分たちの別のビジネスに投資をするため、農業のため、そして⾃分⾃⾝のために働いています。ただし、受注が増えて私たちのビジネスが⼤きくなれば、オジョバで働く⼥性の数が増えます。始めた当初は50⼈でしたが、今は500⼈に増えました。バランスを取り続けることが⼤切です。エシカルでいたいと思います」 

ヨハンとトレーシーはシアバターを⽣産し始めてからずっと、⼥性たちに伝えてきたことがあります。それは、このビジネスが明⽇なくなるかもしれないということです。 

ヨハン 「だからこそ、収⼊源を多様化することをずっと彼⼥たちに伝えてきました。取引先も組合も彼⼥たちの⼈⽣を保証してくれると思わないこと。気候、フェアトレード、シアバター、どれも暮らしの保証になることはありません。何が起こるか分からないからです。だから、オジョバの⼥性たちは複数の仕事をしています。農業の他にも、例えばソープや化粧品、シャンプーをつくって、マーケットで販売しています。私たちは⼩規模企業経営のノウハウを彼⼥たちに教えています。会計についても話をしました。お⾦の扱い⽅、収⼊を得るためのコツ、注意すべきことですね」

ヨハンとトレーシーは、⼥性たちと⼀緒に、コミュニティだけではなく、その⼟地の再⽣、そして⽣態系を⾃然な状態に戻すことに熱⼼に取り組んでいます。その中で、最近始めた野⼼的な環境再⽣プロジェクトについて話を聞きました。

ヨハン 「昔、今は亡きパウロと⼀緒に働き始めて、互いのパーマカルチャーや⼟壌など、共通する知識を持っていたので、ソーラー発電を始めるなどコミュニティのための新しいアイデアについて話し合っていました。その後、次第にサステナビリティやリジェネラティブにフォーカスしたプロジェクトに取り組み始めました」

ヨハン 「今取り組んでいるのは、複数年に渡るプロジェクトです。まず絶滅が危惧されているシアの⽊を植えます。アフリカでは薪⽊として使える硬材の需要は圧迫していて、シアの⽊は薪⽊として伐採されてしまい、植樹が必要なのです。電気コンロはありません。そこで、我々はアフリカ原種の乾燥地帯で育つ⽵を⾒つけたんです。とても早く育つ⽵です。シアの⽊や硬材への需要を抑え、⾃⽣樹⽊を守るために薪として使える⽵を育てています。アフリカで⽊の伐採は⼤きな問題ですからね」 

彼らは、より持続可能な農業をしていくために⼟壌の窒素含有量を増やすための⼟壌改善に取り組んでいます。 

ヨハン 「コミュニティに対してよりサステナブルな農法技術トレーニングも⾏いました。その他には、⼩規模なビジネス、例えば養蜂も始め、何百ものハチがこの地域に戻ってきたので、養蜂による新たなビジネスがコミュニティで⽴ち上がりました。今新しいハチの巣箱も作っています」 

この環境再⽣プロジェクトを始めてもうすぐ2年が経つといいます。昨年、もっと効率よく⽕を焚くことができるように、⼥性たちは⼟性のロケットストーブを作るトレーニングを受けました。 

トレーシー 「シンプルな作りで彼⼥たちにも馴染みがある形をしているので受け⼊れられやすかったです。バイオ燃料もつくりました。シアバターの製造過程で出る”かす”を使ったのでごみはゼロです。⽊を燃やさなくていいんです。この”かす”はコンポストにも使えることがとても素晴らしい点です。”かす”だけでは⾜りないので、⽵も加えます。⼩さくてもたくさんの利便性があります」 

⼤切なポイントは、コミュニティ再⽣のために⼥性たちに教える農業技術が昔からアフリカで使われていたものだということです。現代社会の中で、欧⽶からの技術がこの地域にも⼊って

来たため、アフリカに暮らす⼈たちはそれを受け⼊れてしまっていたとトレーシーは話します。 

トレーシー 「昔は⽊を伐採せず、⽊の下で作物を育てるアグロフォレストリーが⾏われていました。この地域では⾬が少ないため、農業だけで⾷べていくのは難しい。1年のうち8ヶ⽉から10ヶ⽉は乾季ですので、⽊から採れる⾷べ物が必要なんです。私たちはそのようなケースを探すために、ブルキナファソやマリの奥地まで出かけました。私たちのコミュニティに暮らす⼥性たちに昔ながらの農法を紹介したいのです。古き良きノウハウを持っている⼈たちと彼⼥たちが繋がることができれば、⾃分たちのコミュニティを再活性化できると思います」

ヨハン 「この環境再⽣の取り組みの⼤部分を占めているのは技術知識を伝えることではありません。むしろ、コミュニティが⼀つになって話し合うこと。そうすることで⼈々の考え⽅に変化が⽣まれます。私たちが彼⼥たちに指導するのではなく、彼⼥たち⾃⾝が前に進むために古き良きノウハウを伝える⼿助けをしたいのです」 

さらに彼らは今、⿃類の研究にも関わっています。 

ヨハン 「アフリカを通ってヨーロッパに⾏く渡り⿃がいます。ガーナの⿃類専⾨家と⼀緒に、その渡り⿃の数を数えています。オジョバの⼥性の中にも⿃に興味がある⼈がいます。ガーナでも多くの⼈が、⼥性たちのことを『読み書きもできない⾺⿅な奴らだ』『彼⼥たちが知っているのは、⾃分らが暮らす⼩さな村のことだけ』などと⾔いますが、彼⼥たちにハイテクな機械を⾒せれば、彼⼥らはその機械を組み⽴ててしまうでしょうね。本当に頭が良い。彼⼥たちには機会が与えられていないだけなんです。世界のこういう側⾯に怒りを覚えます。多くの⼈は彼⼥たちをただの貧しい⼈、無知な⼈だと思うでしょう。彼⼥たちは我々より多くのことを知っている。これが事実です」 

外部のエンジニアに来てもらい、農業技術などのトレーニング提供してもらった時、⼥性たちはトレーニングの後しっかり質問をしたと⾔います。 

トレーシー 「読み書きができないからこそ、彼⼥たちの記憶⼒には⽬を⾒張るものがあります。ある時は『5年前にあの⽇にこういうことがありましたよね』なんて聞いてくることもありました。私たちの⽅がそんな詳細まで覚えていないくらいです」 

Ojoba Collectiveが⽴ち上がり、シアバターの⽣産や⼥性たちがビジネスを始めることで、コミュニティの中のパワーバランスが変わってきたといいます。 

トレーシー「私たちが初めてガーナに⾏った時、虐待が起こっていました。当時は⼀夫多妻制が当たり前だったからです。⼥性たちは競争ばかりして、そこに協⼒はありませんでした。さらに彼⼥たちは『私たちには何もできない』『私たちが何かを変えることなんてできない』『こんなことをしたら夫がなんて⾔ってくるか分からない』『⾃分が⽣んだ⼦どもが結婚できなくなるかもしれない』なんて⾔っていました。でも、みんなで協⼒すれば、他の⼥性たちも同じように⽴ち上がれば、できることがたくさんある。そうして、⼥性たち⼀⼈ひとりの⾃尊

⼼が⾼まりました。経済⼒を持つことができたからです。少しずつですが、⾃分⾃⾝のことを⼤切にできるようになり、彼⼥たちの夫もそんな⼥性たちを尊重、尊敬し始めたのです」 

ヨハン 「彼⼥たちは、今地域でとても尊敬されています。エンパワーされた⼥性たちは各家庭でも⼤切にされ、仕事がない男性もいますから。⼥性がお財布を握っているんですね。それはとても⼤きな意味を持っています。⼀夫多妻制から⼀妻多夫制に変わったりしてね。それは良い社会かもしれません。⼥性の⽅が賢いですから(笑)」

トレーシー「私たちはいつも⼥性たちに家庭での様⼦について話を聞きます。家庭内暴⼒が起こる⼀つの理由は貧困によるストレスです。ストレス発散のために暴⼒的な⾏動に⾛ります。今では家の中のストレスが軽減されて、家庭内にハーモニーが⽣まれています」 

最後に、ガーナの地でコミュニティの再⽣に取り組む⼆⼈はただのシアバターのサプライヤーではないですね、と⼆⼈に伝えると、「我々はみんなRegenerator(再⽣家)だね」と笑いながら返してくれました。 

「⼤切なのは、passhion(情熱)とcompassion(思いやり)」と語る⼆⼈からまた話を聞ける⽇が待ちきれません。 

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