OUR ETHICS

食べて育む地球への思いやり 2023年のヴィーガニュアリー

新年を迎えると、ヴィーガニュアリーの季節がやってきます。

「ヴィーガニュアリー」とは、「Vegan(ヴィーガン)」と「January(1月)」を組み合わせた言葉で、毎年1月(もちろん、それ以降も!)にヴィーガンのライフスタイルを取り入れることを促すイギリス生まれのムーブメント。企業やメディアと協力しながら暮らしの中でヴィーガンの選択肢を増やし、よりアクセスしやすくするための活動を行なっています。2022年1月に行われたキャンペーンには世界中で62万人以上が参加し、キャンペーン対象国で1,540 以上の新たなヴィーガン製品やメニューが開発、展開されたと言います。

Veganuary ウェブサイト https://veganuary.com/

地球をケアするラッシュのアースケアチーム

ラッシュでは毎年グローバルでヴィーガニュアリーに参加しています。ラッシュジャパンでは社内企画として、アースケアチームが様々なアクティビティの企画をリードします。

「アースケアチームって、なんだかカッコいい名前ですね」

社外の方にこう言われたことは、一度や二度ではありません。そう、ラッシュには「地球をよりみずみずしく、豊かな状態で次世代に残すため、事業を成長させると同時に地球環境の保全と再生に貢献可能な事業プロセスおよび社内カルチャーの発展と浸透に貢献すること」をミッションとしたアースケアと呼ばれるチームがあります。

そんな地球をケアするアースケアチームには「コミュニケーション」という仕事もあります。

6. コミュニケーション
毎年、環境パフォーマンスを報告し、ラッシュで働くスタッフが常に環境問題を心の中に留めていることを確認し、このポリシーが約束したことを確実に実行します。通常はトップからメッセージが発信されますが、組織にはそれを広めるための人のネットワークが必要です。私たちは、環境のために行動を起こしたいと思うすべての人を励まし、サポートし続けます。また、お客様と一緒にキャンペーンを行い、重要なテーマを明るみに出すことも大切だと考えています。私たちは周囲の人々に力を与えることが好きで、情熱を行動に移すことが大好きなのです。
(グリーンポリシーより抜粋)

本来ヴィーガニュアリーはヴィーガンのライフスタイルにチャレンジするキャンペーンですが、ラッシュジャパンのヴィーガニュアリーはヴィーガンだけに限定せず、ベジタリアン、ペスカトリアン、フレキシタリアンなど様々なライフスタイルを選べるエントリー者を募りながら、プラントベースの食事をいつもより多く取り入れるような情報発信や企画を実施し、より多くのスタッフがヴィーガニュアリーに興味を持ってもらえるようにしています。

アースケアチームのTOMOKOさんは「ヴィーガニュアリーに参加することで、ラッシュで一緒に働く仲間に『地球への思いやり』を育んでもらいたい」と言います。

My Lush Life #7 Tomoko, Earthcare
食べて楽しむ、今年のヴィーガニュアリー

昨年、2022年のヴィーガニュアリーはコロナ禍ということもあり、オンラインでイベントとして、社内のチャットスペースで近所で見つけたヴィーガンアイテムやレシピの紹介をしたり、社内の学びの場「ラーニングハブ」の時間を活用したオンラインでのパネルトークやウォッチパーティーを行いました。また、昨年は初めてヴィーガニュアリーアンバサダーを社内で公募し、アンバサダーによる事前の座談会と終了後のフォローアップに参加したといいます。

ラッシュジャパンのヴィーガニュアリー 2022

73

ラッシュジャパンのヴィーガニュアリー参加者数


参加者のエントリーコース

ヴィーガンコース8.8%
ベジタリアンコース7.0%
パートタイムベジタリアン1.7%
ペスカタリアン8.8%
フレキシタリアンコース73.7%

参加理由

環境への影響86.3%
動物福祉63.0%
健康56.2%

2022年の年末、今年のヴィーガニュアリーの企画を考える中で、社内のヴィーガニュアリーアンバサダーにもヒアリングをしたところ「今年はみんなで食べたい」という声があがったといいます。最近ラッシュに入社したメンバーにも、ラッシュブランドとして大切にしていることをどうやって感じてもらえるかを考えながら、2023年のヴィーガニュアリーは昨年のチャットルームでの情報交換に加えて、「地球への思いやりあふれる、食べて楽しむイベント」を実施することになりました。

VEGANUARY EVENT REPORT

地球への思いやりあふれる八一農園 がラッシュのオフィスにやってきた

1月11日(水)、この日は待ちに待ったヴィーガニュアリーのオフラインイベントの日。神奈川県茅ヶ崎市を拠点に不耕起栽培で野菜や大豆を育てている八一農園の皆さんが東京にあるラッシュのオフィスに遊びに来てくれました。

「八一農園、園長のユウです。皆さんお久しぶりです!」

実はユウさん、農業に勤しみながら昨年までラッシュで働いていた私たちの元同僚なのです。この日はユウさんと一緒に野菜を作っているパートナーのアキラさん、そしてチームの皆さんがオフィスに来てくれました。

ランチ時に合わせて、前日に収穫したという野菜マルシェがオフィス内でオープンし、八一農園の新たな取り組み「SOYSCREAM(ソイスクリーム)」という名前のアイスクリームの試食も始まりました。

オフィスに出社しているスタッフが採れたての冬野菜目がけて、マルシェに立ち寄ります
手前は八一農園で収穫されたサツマイモをじっくり焼いた焼き芋ペーストを乗せたソイバニラフレーバー、奥はナッツ入りの塩キャラメルフレーバー

早速、豆乳ベースのアイスクリームをいただいたスタッフは、「豆乳独特の苦みがなくて、ミルクのような濃厚さがありつつも後味はさっぱり、甘味も爽やかで甘ったるさが口に残らない」と驚きの表情。「通常のアイスよりも食感があり、食べた後の満足感がありました」という感想を届けてくれる人も。中には「何杯も食べちゃう優しいソイスクリーム、それはソイ心のわんこそばのよう」とポエムのような表現をするメンバーもいました。

そんな贅沢なアイスクリームの試食をしながら、オフィスのミーティングルーム「HUB FOR COSMETIC REVOLUTION (通称「ハブ」」では、八一農園のユウさんとアキラさんをゲストに迎え、トークセッションが始まりました。全国のショップ、神奈川県愛川町のキッチン、そしてリモートワーク中のメンバーもライブ配信でトークイベントに参加しました。

左からアキラさん、ユウさん、司会はアースケアチームのTOMOKOさん

トークは、お二人がヴィーガンになったきっかけを聞くところから始まります。

TOMOKO 今日はお忙しい中、ラッシュのヴィーガニュアリーイベントにご参加いただきありがとうございます。早速ですが、お二人ともヴィーガンなんですよね。

アキラ 2016年の夏頃、たまたまSNSで工業畜産の動画を見ました。それがきっかけで食肉の生産プロセスを知ってしまい、畜産のあり方に疑問を持ちました。食について深く考えて、自分の食事をどうしようかと思い、その日の夜に「ユウちゃん、僕もうお肉はいいや」と伝え、本日に至ります。

ユウ アキラくんは前日までハンバーグ食べてましたからね。私は元々、お肉を食べないなら食べないでいられたんです。ラッシュで働いていたことにもつながりますが、人間と動物の境界線について考えるような子どもだったので、できればお肉は食べたくないとは思っていたけど、家族と同じものを食べて暮らすということが大事だったので、普通に食事してたんです。けど、彼がそう言ってくれたので、「私、もうお肉食べなくていいんだ」と思って本日に至る、という感じですかね。

TOMOKO 同居する家庭の中で自分だけがヴィーガンというのはハードルが高くなることもありますよね。お二人はヴィーガンになって、何か変わったことはありましたか。

アキラ 良かったことは、食事についてめちゃくちゃ考えるようになったことですかね。それまでは全然考えてなかった。農業って体力が必要だから、持久力がついたのも良かったかもしれません。体は軽くなりました。僕は痩せやすいから、デメリットとしてはなかなか太れないことですかね。中学校の頃は毎日海に入るような生活をしていて、僕は海から自然の大切さや怖さ、尊敬の念を学んできたので、海で培った感覚を今、畑で表現している感覚です。

ユウ お肉を食べないと不足しがちな栄養素もあります。例えばビタミンB12は本来牛が草を食べることで牛が体に摂取するそうですが、元をたどればそれは土の中にいる微生物が栄養となってるそうです。今では草を食べないで飼育される牛がいたり、飼料にサプリメントを入れて栄養を取ってることもあるので、牛からじゃなくてサプリで摂取すればいいかな、と考えたりもしました。ただ、私は元々あまりサプリを取るタイプじゃないので、土に栄養素があるなら、私たちがいつも食べてるお野菜は土の中で育っているから、お野菜を皮ごと野菜を食べれば栄養が取れるんじゃないかと思って。今は野菜を皮つきのまま食べることも多いです。

マルシェで里芋を買ったスタッフはこの話を聞き、その日の夜に皮付きのまま揚げ里芋を食べたそう

TOMOKO 今回のは八一農園の野菜を食べたいと思い、イベントを計画しました。そんなお二人が農業を始めたきっかけについて、聞いてもいいですか。

アキラ ヴィーガンになったきっかけと一緒で「お肉食べなくなったら、僕は何を食べるんだ」と考えたら野菜だと思って、「野菜なら作れるんじゃないか」と野菜を作り始めました。僕は動物愛護の観点でヴィーガンを選んだわけではなくて、工業畜産のプロセスで作られたお肉を食べることが怖かった。動物を守るというより、自分を守る自己防衛のような感じです。今では動物のことも考えていて、畑に来る色んな生き物たちが愛おしいと思うようになりました。

自分の食生活が変わったタイミングで、11月頃だったと思うんですけど、友達のおじいちゃんの畑で里芋の収穫を手伝っていたら「面白い!」と思ったんです。ただ、同時に罪悪感も感じて。それは、一番最後の良いところだけをやらせてもらう罪悪感です。そのおじいちゃんは40年以上野菜を作っていて、まずそれが「すごいな」って思ったし、同時におじいちゃんへの憧れも芽生えました。僕はサーフィンや音楽をやってきて「カッコいい」ことが好きな男の子だったので、90歳を超えるおじいちゃんがカッコよかったことが農業の世界に入りたいと思った一つのきっかけです。結構、不純な動機です(笑)。そこで、そのおじいちゃんに直談判して、家庭菜園としては十分な広さの畑をお借りしました。実際、野菜作りを始めたら、野菜を作ることがこんなに面白いんだ、ということを知ることができました。

TOMOKO 入り込みやすいタイプですね!

アキラ 神奈川県の茅ヶ崎で農業をやるということは、都市農業です。農地はあるけど余っているわけではない。もう少し畑をやりたいと思って調べたら、農地って借りられないんですよ。農業者にならないと畑を借りられないと知った時、もしそのおじいちゃんに「アキラくん、明日畑返して」って言われたら、自分の畑がなくなってしまうじゃないですか。僕にとってサーフィンと音楽は一生やめないと思ってることですが、農業がそのジャンルに入り始めた。だったら自分で畑をキープできる方が精神安定上いいなと思って、農業という世界に入っていきました。

そこで、自分でやるなら有機農業をやりたいと思って、地元の茅ヶ崎で有機農業を40年くらいやっている農家さんの畑に通いました。自分の中で一瞬盛り上がってるだけかもしれないから、本当に農業をやれるか試そうと思って、一番暑い真夏の時期に援農という形でお手伝いをし始めました。2ヶ月くらい経った時、僕の中の炎が消えていないことに気づいて、そこで研修という形に切り替えさせてもらいました。

ユウ お肉を食べなくなると食べるものは野菜がメインになる。そうすると、ほとんどの食べ物を自分たちで作れることを知っちゃった。そうしたら買った野菜をこれから食べていくよりも、自分たちが畑を持ちたいという気持ちが勝ったんですよね。それから1年間、研修をさせてもらって農業者になりました。

茅ヶ崎でゆっくりゆっくり育つ不耕起栽培の野菜たち

TOMOKO そうやって農業の道を歩み始めたお二人。野菜の育て方には色々なやり方があると思いますが、八一農園は「不耕起栽培」という方法で野菜を育てているんですよね。

アキラ 「不耕起栽培」って聞いたことある人、いますか?不耕起栽培ってまだまだ知られてないんですけど、何かというと基本的に畑を耕さないんです。今、日本の90%以上の農地は慣行栽培といわれる方法で野菜を育てています。食糧の安全保障という観点で、たくさんのお野菜を安定して安価で供給するために化学肥料や農薬を使うのが主流ですが、僕たちは新規就農者としてこの時代に農業を始める際に、何か違った方法がいいのではないかと考えました。

TOMOKO 耕さないって聞くと、素人は畑の土が固くなってしまうのでは、と思ってしまいます。

アキラ 畑を耕さないというのは、畑の土があらわになっていない状態です。何かしらの草や植物が生えていて、そうすると生きた根っこが常に土の中に張って、微生物がたくさんいます。だから土の中にミミズやモグラなどの生き物がいて、生態系が豊かに存在してるんです。根っこや虫たちが土を耕してくれる。だから、めちゃくちゃ土が柔らかいんです。でも、不耕起栽培の畑の野菜ってゆっくりゆっくり育つので、農業としては非効率。スピードが遅くて、収量も少ないかもしれない。イコール、なかなかそこをやる農家さんが少ないんです。

TOMOKO 不耕起栽培で無農薬、堆肥もヴィーガンと聞きました。

アキラ 堆肥は植物性の堆肥です。例えば牛糞や鶏糞を使った動物性の堆肥もありますが、僕らの場合は工業畜産に依存しない方法として落ち葉や畑に生える草を刈って、微生物の力で堆肥化させた植物性の堆肥を作っています。

TOMOKO そうなんですね。色々な野菜を作られていて、今日も白菜やネギや里芋をお持ちいただきましたが、二人が一番好きなお野菜はなんですか。

ユウ 今の時期はネギが好きですけど、芽キャベツも好きです!自分たちで作るまでは芽キャベツがどうやって育つかも知らなくて、全然好きじゃなかったんです。芽キャベツって、畑で腰下くらいの高さにヤシの木みたいに幹が育って、幹から葉っぱがたくさん出てきます。その幹のところに段々小さなキャベツみたいな芽キャベツが少しずつ成っていくんです。ほら、お祭りや神楽で使う手に持つ鈴みたいに、幹に実が成るんです。その幹からポキポキと手で収穫します。

TOMOKO おすすめの食べ方はありますか。

ユウ 芽キャベツってシチューのイメージを持ってるかもしれませんが、煮ないでください!煮ないで、焼いて欲しいです。フライパンに油をひいて、ニンニクが好きだったらニンニクも入れて、ゆっくりゆっくりグリルして、焼き目がついたらお塩をかけるだけ。私たちって、食べ物を他の食べ物に例えて表現する癖があるんですけど、この芽キャベツはトウモロコシのような味がします。とっても甘くて、サイズもいい感じに育ってる時期なので、是非食べて欲しいです。

アキラ 今は冬野菜、根菜ですね。僕は根菜全般大好きです。大根は作るのも好きで、食べるよりも作る方が好きです。今の時期は三浦大根などの寒さに強い白首大根が土から下に伸びて育ちます。毎朝霜が降りるので、野菜たちは自分が持つデンプンを糖に変えて、凝固点をあげて凍らないようにするんです。自分を防御するんですよね。それによって冬の野菜は糖度が上がって、甘みが増す。春とか夏の大根は辛味大根と言われる辛さがある大根も採れますが、冬の大根や冬野菜は全般的に甘みが増します。冬のほうれん草も、めちゃくちゃ美味しい。本当に甘いんです。

<em>野菜の販売はパッケージフリーの量り売りスタイル、筆者がトークイベント後に買おうと思った芽キャベツは、なんと売り切れ</em>
大豆の叫び、ソイスクリーム!

TOMOKO 今日は贅沢にも試作中の「ソイスクリーム」をいただきました。八一農園は大豆にかける想いがとても強いと聞きましたが、ソイスクリームについて聞かせてください。

アキラ 駄洒落の要素もあるんですけど、僕らは畑のアイスクリームを作りたくて、大豆でアイスクリームを作り始めました。原料は大豆とオーツ。オーツはクリーミーさを出すのに使ってて、大豆臭さもなくなります。

TOMOKO そう!豆乳を使うアイスって、当たり前ですけど大豆の味がすることが多いけど、ソイスクリームは違いました。大豆独特の苦味もない。普通のアイスクリームみたいなんだけど、さっぱりした後味が印象的。食べ応えがありながら、さっぱりしてる。

ユウ そう言ってもらえて、嬉しいです!

アキラ 実は僕、大豆を作るのは好きなんですけど、豆乳が好きじゃないんです。僕が食べれないものは自信を持って提供できないので、僕が食べれるまでチューニングしました。大豆はイソフラボンが豊富だし、オーツが入ってるのでビタミンやタンパク質も豊富で栄養価が高い。

ユウ 大豆とオーツの甘みにきび砂糖とこめ油を加えて、フレーバーを加えます。

TOMOKO 白砂糖は精製過程で動物由来の骨を使ったりすることが多いのでラッシュのスクラブなどに使うお砂糖もヴィーガンシュガーを使っていますが、皆さんもヴィーガン仕様のきび砂糖を使ってるんですね。ところで「ソイスクリーム」の名前の由来はどこからきてるのでしょうか。

アキラ 英語で「大豆(SOY)」の「叫び(SCREAM)」という意味で、最初は「絶叫大豆」と呼んだりしてたんです。名前に込めた想いは「地球の叫び」であり、僕らの声にならない叫びをアイスクリームで表現したかったんです。

僕らがなぜ不耕起栽培をやっているかというと、やっぱり環境問題を無視できなくて。世界の温室効果ガスの排出量のうち農業や土地の利用って全体の1/4くらいを占めるんです。僕らも農業をやりながらそれに気づいた時に、ラッシュでも使っている「リジェネラティブ」という言葉があるじゃないですか。僕たちがやってる農業って、英語だと“regenerative organic agriculture (リジェネラティブ・オーガニック農法)”と呼ばれます。それは土壌を再生させる有機農法です。大気中の炭素を唯一土に固定できるのが植物で、耕運すると植物の根っこなどに固定された炭素が地上に放出されます。耕運すればするほど二酸化炭素を大気中に放出するという現象が起きますが、不耕起栽培は畑を耕さないのでそれが起きない。それに加えて植物を共生させるので土壌の炭素貯留量が多いと言われています。そういう意味では地球環境へのポジティブな影響は大きいはずです。

今の地球環境を良くするために、不耕起栽培をやりたい人が増えて欲しいと思います。僕の周りでは増えてるけど、営農になるとハードルが高い。だから「不耕起栽培をやりたい人が増えるにはどうしたらいいんだろう」って考えた時に、そういう人を送り出す仕組みが必要なので、僕たちは認定農業者という資格を取りました。これで研修生を受け入れられるようになり、研修生を農家として送り出すことができる。でも、送り出した後に路頭に迷う人たちを生み出しかねないので、今度は研修後に農業を続けられる仕組みを作ろうと思って、その人たちが作った作物を何か買い取って、販路として広げていくことができないかと考えついたのが、このアイスクリームです。

僕たちのアイスクリームは大豆とオーツを混ぜています。ストロベリーとかマンゴーの方が美味しそうだし、「みんな好きだろうなぁ」って分かってるんですけど、そうすると不耕起の農家さんたちの利益に繋がらないので、このソイスクリームはパンプキンやスイートポテト、ピーナッツなど不耕起栽培で作れるフレーバーのブランドになっていくと思います。不耕起栽培の農家の営農をサポートしていくソリューションとしてのアイスクリームです。

TOMOKO 大豆を手で選別する時に出る不揃いの豆を使って作ってるのかなと勝手に想像してましたが、そこまで奥が深いんですね!

アキラ 大豆にしたのにも理由があって。例えば「人参がいっぱい採れたから買ってください」と言われても、生鮮は厳しくて人参とか大根だと一気にどうにかできない。でも大豆だったら買い取っても腐らないので、保存が効きます。さっきも言った通り、不耕起栽培は肥料も入れず、耕運もしない。だからやっぱり確実に育つものじゃなきゃいけない。そこで相性が良いのがマメ科の植物です。マメ科の植物は根っこに根粒菌という微生物が共生して、空気中の8割を占める窒素を使って土を育ててくれるから、化学肥料を使う必要がなくなります。不耕起栽培の新規就農者って良い土地ばかりをお借りできる訳でもないので、比較的地力とか選ばずに育つ作物が大豆なんです。

TOMOKO 大豆を不耕起栽培で育てることで、土壌が改良されていくということですか。

アキラ そうですね、土壌の再生にも一役買ってますね。

ユウ 茅ヶ崎だけかもしれませんが、7月10日の「納豆の日」の前後が大豆のまき時って言われてます。

アキラ 毎年7月10日までに大豆の種まきをするようにして、収穫は12月上旬まで。僕らの畑は草も生やすし、耕運もしないので多くの工程は省かれますが、大豆は真夏にまくので、周りに生える草のスピードが速いんです。なので大豆から小さく芽が出たら、芽に光が当たるように周りの草をひたすら刈ってお世話しながら、成長を見守ります。収穫までの僕たちの仕事は、ほとんど草刈り。

ユウ そうやって守った大豆が緑の枝豆になります。枝豆と大豆って、一緒なんです。枝豆で食べずに我慢して、茶色く枯れるまで刈らずに待ちます。それから脱穀すると、大豆が採れます。その一部は豆乳にしてソイスクリームに使います。一部は保管して、また次の7月に畑にまくという一年のサイクルです。

TOMOKO 面白いですね!そんな中、最近皆さんの畑では「ハーベストコモンズ」という取り組みも始まったそうですね。

ユウ そうなんです。私たちの畑のうち、今まで二人で使っていた二反の畑、600坪ほどの広さの畑がありまして。畑に来てくれる人たちがたくさんいて、「みんな、きっと農がある暮らしをしたいんだろうなぁ」と感じてました。そこで、いわゆるシェア畑ではなくて、コミュニティの畑みたいにみんなで使う畑として「ハーベストコモンズ」という場所にしました。これまで私たちがやってきた作付けプランをもとに毎月作業をしていく予定で、最近そのメンバーが決まりました。初年度は全29組でハーベストコモンズを管理していきます。

そこで収穫できたものは各自がどれだけ採ってもいいし、畑に何度来てもいいし、来なくてもいい。とにかくルールを決めなかったんです。ルールって分かりやすい仕組みですけど、ルールを守っていれば正しいのかと考えると、「あながちそうでもないな」と思ったんです。今、社会には色々なルールがあるけど、「あなたはルールを守ってないからダメ」「私はルールを守ってるから良い」とも限らないじゃないですか。

ルールがないから自分で相手のことを思ったり、例えば一人がたくさん収穫してもいいけど、他のメンバーの顔を思い浮かべて、「私が10個採ったら他のみんなの分が足りない」みたいに想像して欲しいですよね。子連れで参加する親子もいるので、大人とのそういう姿って子どもたちにとっても学びになるだろうし、もしそこでたくさん収穫できて「他のマルシェで売っちゃいました」みたいなことが起きても、それはその時みんながどう捉えるかを話せれば良いんじゃないかと思います。

最初から「それはダメです」ということが必要ない世界を作りたい。畑って、本当に平和なんですよ。畑には色んな人や色んな虫や動物が来ます。すごく平和が保たれてるんです。

TOMOKO 今の言葉、胸に刺さります。土を触ったら、そんな風に感じるのかもしれませんね。

ユウ そんな考えをシェアしたいから、ルールはなくて良いと思ってます。地球からしたら二反の畑ってすごく小さい表面ですけど、そこから平和な世界が作れるんじゃないかと思ってます。それが「うまくいったね」「やっぱりうまくいかなかったね」とやっていって、うまくいったらもっと広がる。実験的な意味もあるんです。この春からいよいよハーベストコモンズが始動していきます。

私たちの今後の動き、ハーベストコモンズやお野菜の直売、味噌づくりなどのワークショップについては八一農園のインスタグラムで発信しているので是非見てみてください。「81 Organic Radio」というポッドキャストもやっています。今日みたいなお話をアキラくんと二人で、平日毎日10分間、ただただ二人で喋ってます。中身がある日もない日もあるんですけど、そこでもこういう私たちの気持ちとか今やっていることも話したりしてます。ソイスクリームの販売の準備もしてますので春頃にはご案内できたらと思ってます。

TOMOKO ソイスクリームもハーベストコモンズも楽しみにしています。是非アイスの販売が始まったらまたラッシュに遊びに来てください。今日はありがとうございました!

TOMOKOさんはイベント後、「久しぶりのオフラインイベントで、地球を冷やすホットなソイスクリームもいただいて、八一農園の地球を思いやる熱いお話にときめいた」と目をキラキラ輝かせていました

Updated on 20th January, 2023

Audio player image

12:11