パーム油に奪われた命を取り戻すのは、 誰かじゃなくて私だった
2019年1月24日 トークイベント
2019年1月24日に開催されたトークイベント「オランウータンからのSOSに応える5つの⽅法」の模様をお届けします。
インドネシアの森や動物の命を奪っているのが、私たちの⽇常⽣活に欠かせない⾷品や⽇⽤品だったとは。東南アジアの島国で今まさに起きている凄惨な現場を救うのは、研究者や活動家だけでなく、私たち⾃⾝が起こす⾝近なアクションなのかもしれません。
ラッシュでは2019年1⽉25⽇(⾦)から#SOSsumatraキャンペーンを開始し、スマトラのオランウータンが暮らしていた森を取り戻すための寄付⾦を募る限定商品『オランウータン ソープ』や『スマトラ シャンプーバー』を発売しました。
今回のキャンペーンに先⽴ち、1⽉24⽇にはパーム油についてのトークイベント「オランウータンからのSOSに応えるための5つの⽅法」を開催しました。また、イベントはライブ配信され、コメントを通じてさまざまな意⾒が集まりました。
イベントでは3⼈のゲストを迎え、パーム油が⽣んでいる問題やどのようなアクションを起こしているのかについて、それぞれの視点から語っていただきました。
【現地に赴いて調べ、明らかにしていくやり⽅】
まずはじめに、オランウータンが現在どういった危機に瀕しているかを現地で実際に調査し、企業に広める活動をしている熱帯林⾏動ネットワーク JATANの中司喬之さんは、このように語りました。
「⾊々な感じ⽅をする⼈がいる世の中。それぞれに向けて、⾊々なチャンネルから発信していく必要があるのだと思います」 。
中司さんは、インドネシアで起きる森林破壊の最⼤の原因がパーム油であると指摘します。パーム油を作るために必要なアブラヤシの畑は、インドネシア各地の森林を切り開くことによって作られます。ここで、JATANと協⼒関係にあるインドネシアで活動するCentre for Orangutan Protection (COP)のメンバーが、パームプランテーションの労働者に扮して潜⼊撮影した動画が紹介されました。
オランウータンは絶滅危惧種として公式に保護される対象であるにも関わらず、苗を⾷べてしまうと害獣とみなされ、命を奪われてしまいます。普段は⽊の上で暮らしているオランウータンが森を追われ、慣れない地上でさまよう様⼦が映し出されると、会場にはなんともいえない重苦しい空気が漂いました。
また、⼀般の消費者が簡単にできるアクションとして、パーム油がどんな製品に使われているのかを知るためのwebサイト「パーム油とは? – あぶない油の話〜パーム油のことを知るサイト〜」が紹介されました。メーカーによってはパーム油使⽤の有無を明かしていないこともあるのだそう。そういった企業をただ否定するのではなく、情報開⽰を求める声を集めることが重要だと中司さんは話します。
【企業に直接語りかけ、挑戦するやり⽅】
次に、グリーンピース・ジャパンの広報である河津 純⼦さんは、パーム油の⽣産について曖昧な姿勢をとる企業について、このように話します。
「産業の中で⼤きな企業が姿勢を改めることは、他の企業に対しても⼤きなインパクトを与えるきっかけになるんです」 。
⼤胆なアクションがニュースで取り上げられ、時折センセーショナルさが話題を呼ぶグリーンピース。ですが、今回のイベントでは、そういった⽅法を取る前に様々なアプローチを重ねていることが明かされました。たとえば、現地調査を重ねてレポートにまとめ、オープンソースとして公開するほか、署名活動やパーム油を使⽤している⾷品メーカーなどの賛同を募り、協⼒関係を積み重ねていくのだそう。さらに、姿勢を改めた当事者企業の経過をモニタリングすることによって、再発を防⽌する役⽬も担っています。このプロセスで再発が⾒られたり、約束が破られた場合に、彼らが⼿段を辞さないアクションを起こすということがわかりました。
また、河津さんはグリーンピースが個⼈の寄付によって運営されていると語ります。それによって既存の企業の⽅針や偏りに束縛されない⾏動を取ることができる、と話す彼⼥の眼差しは、穏やかでありつつもまっすぐに真剣なものでした。
【無関⼼な⼈に知ってもらうきっかけを作るやり⽅】
最後に、学⽣団体palmstreamの代表である樋⼭ 輝さんは、パーム油の問題をあまり知らない⼈達に対してどのようなアプローチが必要なのか、学⽣⽬線からヒントを教えてくれました。
「もともと課題に詳しい⼈ではなく、パーム油のことを全く知らない⼈に、どう知ってもらうかのきっかけ作りを考えたんです」 。
樋⼭さんは、palmstreamで企画した謎解きゲームの例を挙げながら、無関⼼層にアプローチする際の⼯夫の⼤切さを語ります。ゲーム形式にこのテーマを⼊れ込むことで、もともとパーム油についての知識や関⼼がない⼩さな⼦ども達でも、この問題を知るきっかけが⽣まれるのです。
また、オリジナルロゴも抵抗感のない「ベビー⽤品」のようなカラーやデザインを⼼がけたのだそう。これらのスマートなアイデアは「真⾯⽬にお勉強というより、ワクワク楽しみながら学んでほしい」という思いが存分に⽣かされています。
⾼校時代にパーム油の存在を知ってから、実際に産地を訪れ、団体を⽴ち上げるに⾄った樋⼭さん。「普段あまり気にしないことへの気づき」が、より多くの消費者への問題提起に繋がると話します。ライブ配信を⾒ていた参加者からも、コメントで「成分は気にしていても、その出所までは気にしたことがなかった」という気づきの声が上がっていました。「難しい問題」という抵抗感を与えずに、パーム油について知るきっかけを作る⼯夫は、⼦どもはもちろん⼤⼈にとっても重要であることが伝わってきました。
【最後のアクションは、あなたが決めよう】
ところで、今回のイベントのタイトルは「オランウータンからのSOSに応える5つの⽅法」。登壇した3名が⾏なっているアクションと、ラッシュのキャンペーンを合わせて、4つの⽅法が紹介されました。ですが、このままでは「5つの⽅法」のうちのひとつが⾜りません。ここで、司会からこんな⼀⾔が。
「5つ目の⽅法、それはあなた⾃⾝のアクションを宣⾔してもらうことなのです」。
イベントの終盤、参加者には紙とペンが配られました。3名の登壇者から聞いたエピソードや知識をもとに、それぞれが周りの⼈と話し合いながら⾃⾝のアクションをまとめていきます。ここで⽣まれた宣⾔は、例えば「周りの⼈に今⽇聞いた話を伝える」「好きな商品の企業がどうなっているのか質問してみる」「買物する時はRSPOマークを確認!」など、膨⼤なミッションというよりも、皆それぞれできる範囲内でのこと。思いおもいの宣⾔は、プロジェクターでオランウータンを映した壁に貼られていき、その様⼦はまるで⼩さなアクションの森がつくられていくようでした。
どんなに⼩さなアクションでも、⼀⼈ひとりが考え、意⾒を交換しながら少しずつアイデアが集まっていくことで、やがて本当の森を取り戻す⼤きなムーブメントに繋がるのかもしれません。そう思うと、今あなたが⾷べようとしているそのスナック菓⼦や、さっきトイレに⾏ったあと⼿を洗った洗剤の原材料がどんな場所からやってきたのか、ほんのちょっとだけ気になってくるのではないでしょうか?
Special Thanks – 登壇いただいたみなさま –
・熱帯林⾏動ネットワーク JATAN 運営委員 中司 喬之⽒
・グリーンピース・ジャパン 広報担当 河津 純⼦⽒
・palmstream 代表 樋⼭ 輝⽒
⽇⽤品に使われているパーム油が森林破壊や希少動物の命を奪っている問題に対し、あなたは どのようなアクションができるでしょうか?
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